元気ですか

電車に痴女がいたって話で思い出したけどさ。(数日前の自分の更新を読んで話を始める人の図)高校生の時にそんな話があってね。そうだな。彼の名前は、仮に佐藤君としておこうか。


佐藤君は当時高校1年生。スラッと背が高く細身。色男。頼りなげな目。弱々しい笑顔。メガネ。異様なまでに色白。ま、そんな感じで、なんかちょっと一言では言い表せない種類の要素が色々と混ぜ合わさった人物だった。彼のような人間が何故、ボクが通うような男臭い男子校に進学する気になったかは誰も触れようとしない暗黒面なので無視することにするが、とにかくまぁクラスメートだったので、ちょっと怖かったが仲良くしていた。ごめん嘘ついた。かなり怖かった。


そんなある日。ただでさえ色白な顔を、より一層に青白くさせて佐藤君が学校に来た。あまりにあまりな表情だったので、ボク等はみんなで彼に理由を問いただしたところ、なんと彼は通学途中の八高線(ド田舎の電車だと思って下さい)で痴女に痴漢をされたというのだ。


痴女に痴漢をされたというのだ!!!


そこは何と言っても、夢も希望も女っ気も無い男子校である。そして痴女なんて存在は、そんな男どもにとって最上級に夢の彼方の物語だった。こっちから向かって行っても逃げるのが女。ダッシュで逃亡するのが女。声を掛ければレイプ犯に追われるかのように。肩がぶつかれば殺人犯に監禁されたかのような絶望の眼差し。そんな共通認識が彼等にはあるんだ。(実際に、ボクの通ってた高校のそばに女子高があったのだが「○○高校の生徒と付き合ってはいけません」という校則があるくらいだった)それを?なんですって?痴女???


クラスの大半が集まって、みなが佐藤君から話を聞きだそうとした。熱狂的な渦。オラに夢を。オラに希望を。地獄に落とされた一本の蜘蛛の糸。彼等の目は燃えていた。輝いていた。美しかった。みなの迫力に押され、佐藤君は、その容姿に似合ったか細い声で、コトのあらましを語り始めた。


なんでも満員電車の中で、無理矢理に自分の前に移動してくる女がいたんだそうだ。「え!?正面からなノ!?」うなずく佐藤君。上がるボク等のボルテージ。彼女は佐藤君の正面に回ると、さわりさわりと佐藤君の股間を撫で回し始めたのだという。「ままままマジで!!?ケツとかじゃなくてチンコだったノ!!?」うなずく佐藤君。激情に流されるボク等のテンション。燃え上がるヒート。破裂しそうなまでにディスカッション。ボク等は知った。知ったんだ。感じたんだ。やっぱり神様はいる。見てる。見守って下さっている。ある者は抱き合って喜び。あるものは歓喜に打ち震えた。嗚呼、母よ。故郷の大地よ。私は生きています。生かされています。この地に。この場所に。


すると、唐突に佐藤君が泣き始めました。


唖然とするボク等。なにがどうなったのか全く理解できない。嗚咽する佐藤君。慌てるボク等。どどどどど、どうしたんだい?なにがそんなに悲しいんだい?すると佐藤君は答えました。「だって、ボク、あそこが大きくなっちゃったんだ。悔しいよ。あんなことされて、ボク反応しちゃったんだ・・・・・」


ボク等は、おもっくそ引いた。


そしてボクは「実名出しちゃマズかったかなぁ」って思った。