http://d.hatena.ne.jp/mokichi/20070225/p1
回答しようじゃないか。


問1.なぜ彼は『のパンティー』と、言葉を付け加えたのか答えなさい(50点)
連載当初のドラゴンボールに登場した全ての登場人物に総じて言えることは、その瑞々しいまでの少年らしさである。これは女性であるブルマにすら見られる特徴で、鳥山明氏の童貞的な側面が過度にアピールされたキャラクター形成は、少年誌として確固たる地位を築いていた当時のジャンプにおいて大きく受け入れられていた。初期登場人物のうち主要な5人のファクターは以下の通りである。性に対して一切の興味を抱かない悟空、性に対する過度な興味を持ちつつも体質(これは少年に不可抗力という言い訳を提供してくれる)によって望みが叶えなれないヤムチャ、貪欲に自らの欲望に対して忠実な行動を取るウーロン、冷静に対処するプーアル(ここでの彼の役割は、一種クラスの真面目な女子生徒といった立ち位置だろう)、そしてそれらの中心にいるブルマ。後にウーロンのキャラクターに人生経験という生々しさと老獪さを持たせた亀仙人という人物が登場するまでは、これら5人のバランス感覚は非常に拮抗していたといえる。ここで悟空の観点から見てみよう。彼にとってウーロンとは、自己の持ち得ない理由によって動く一種の化け物である。ウーロンが興味を持つもの、喜ぶもの、行動の起因となる原理が悟空には一切理解できない。その関係性により、その他の人間に対してかなり自由に振舞う悟空も、理解できないが故の興味か、ウーロンに対してのみどこか遠慮がちである。ヤムチャの視点から見るウーロンは非常に分かりやすい。体格や年齢、全てにおいて上であるはずの自分が敵わない存在である。そこには確かな憧れの気持ちが発生している。プーアルにとってのウーロンは唯一の監視対象者であるし、ブルマにとっては自己の性の境界線について侵食を行なう明らかな敵である。そのような状況の中、彼等に一つの試練が与えられた。彼等5人のうち、唯一絶対的な主導者であったウーロンにもたらされた願い事のチャンスである。
ここで断言できるのは、一人だけエロいことばっかに突っ走っている状況というのは、少年的にはかなり辛いということだ。付いてくる人間、競い合う人間などがいる場合にはまだしも、一人ぼっちで大声を出し続けるのは相当に辛い。白い目に耐え続ける体力、精神力は相当なものである。上記の人間縮図で一人浮き上がってしまった状況の中、左右に揺れ続けるバランスの狭間で主導者としての責務を携え、彼は日々無理をしていたのである。しかしてここで歩みを止めるわけにはいかない。一度自己に貼ったレッテルは、既にアイデンティティとなり確立している(しかも彼はそれを幼年期から続けていたのである)。これを自ら否定する行為は崩壊を意味する。止められぬ歩みと軋み続ける精神の彼方で、彼に対して凶悪な災難が振り翳された。自己のアイデンティティに対する他者の確認作業である。果たしてあの状況下で、ウーロンという一固体がどのような選択をするのかを、彼は他者の目の前に提出しなければならなかったのだ。状況は差し迫っている。選択の余地はない。そう、彼はエロいことを言わなければならなかった。それは必然であった。それでは、果たして彼にどれほどまでの要求ができたであろうか。性行為も体験していない、偶像として女性下着を愛玩するのが精一杯の少年である。しかしながら耳年増な彼は知識だけならばそれ相当なものがあったであろう。踏み込むべきか、それとも妥協すべきか。恐怖もある。しかし憧れは強い。揺れ動く気持ちの中で彼が出した答えは、性に対する知識レベルの低い仲間達にならば通じる程度でしかないエロい要求であった。13才以上の男子ならばすべからく違う要求を行なったであろうことは、確かに明白である。もう少し直接的で、もう少し応用性があり、もう少し持続性のある要求など中学生男子ならば30秒で50ぐらいは思い付くであろう。しかしあの場では、あの仲間達の中でならば、あの要求でウーロンのアイデンティティは保てたのである。結果どうなったであろうか。保たれたバランス、今後も変わることのない位置関係。旅の途中で「ごめんちょっと」などと言い、草むらに分け入るウーロンの描写など誰が見たかったであろうか。「すぐに終わらせるから」などと言った彼を、暗い目で見詰めるヤムチャなど、どう受け止めれば良いのであろうか。果たして、ウーロンが選択したのは妥協なのであろうか。


問2.その時に彼の気持ちを推測し、個人的感情も踏まえて答えなさい(50点)
無事に試練を終えた彼は何を思ったのであろうか。悔恨だろうか、それとも精一杯の満足だろうか。
私は、安堵だったのではないかと思う。